縮毛矯正のしくみ
縮毛矯正は、なぜ癖毛を真っ直ぐにして、その状態を長期間維持することができるのでしょうか?
縮毛矯正というと、「強い薬剤で毛髪内の結合を切って、アイロンなどの熱で癖毛を真っ直ぐに伸ばす」と説明されます。
間違いではありませんが、実際の縮毛矯正はそれほど単純ではありません。
毛髪内では、還元、pH、アルカリ、水分、ミックスジスルフィド、熱、酸化など、いくつもの作用が関係しています。
そのため、
- 酸性だからダメージレス
- ノンアイロンだから自然に仕上がる
- 還元剤濃度が高いから癖毛がよく伸びる
- アルギンニンだから優しい
といった、ひとつの成分や要素だけで縮毛矯正を判断することはできません。
このページでは、縮毛矯正で癖毛がストレートになる基本的なしくみについて説明します。
目次
縮毛矯正は髪の何を変えているのか?
髪の主成分はケラチンというタンパク質です。
毛髪内部のケラチンは、SS結合をはじめ、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用など、さまざまな力によって構造を保っています。
癖毛をストレートにするためには、この毛髪内部を一時的に緩め、形を変えやすい状態にする必要があります。
そのために縮毛矯正では、主に次の工程を行います。
- 1剤で毛髪を変形しやすい状態にする
- 1剤を十分に水洗する
- ブローやアイロンの熱によってストレートな形に整える
- 2剤でその状態を安定させる
つまり縮毛矯正は、単にSS結合を切れば良い訳ではありません。
薬剤によって髪を動きやすくし、その状態で内部構造の歪みを整え、最後に安定させる技術と考えた方が分かりやすいと思います。
縮毛矯正の基本的な4つの工程
① 1剤(還元剤+アルカリ成分)
還元剤などを毛髪内で作用させ、髪を変形しやすい状態にします。
② 水洗
毛髪内に残っている1剤を十分に洗い流します。
③ アイロン
熱を利用しながら、変形しやすくなった毛髪をストレートに整えます。
④ 2剤
酸化剤を作用させ、毛髪を安定させます。
この4工程のうち、どこか一つを強くすれば、きれいな縮毛矯正になるわけではありません。
1剤を強くすれば薬剤負担が増え、アイロンを強くすれば熱負担が増えます。
重要なのは、それぞれの作用を必要以上に大きくしないことです。
縮毛矯正1剤のスペックとは?
縮毛矯正1剤の中心となるのが「還元剤」です。
ただし、実際の1剤の作用は還元剤の種類だけで決まりません。
主に、
- pH
- アルカリ度
- 還元剤濃度
で変わってきます。
縮毛矯正剤のスペックは、これらを数値化したものです。
- 髪に優しく・・・
- ダメージレス・・・
- 縮毛矯正専門・・・
- 低アルカリ・・・
- オーガニック・・・
- 酸性・・・
- 髪質改善縮毛矯正・・・
これらの言葉は溢れていますが、実際どの位の強さの矯正剤を使用しているのか?は、pHやアルカリ度、還元剤の種類や濃度などの数値(スペック)を見なければ分かりません。
文字とは違い数字は誤魔化せません。髪に負担を掛けたくないお客様は、参考にしてください。
| pH | アルカリ度数 | 還元剤濃度 (新生毛用) | 還元剤の種類 | |
| アルカリ性 縮毛矯正 | 3~7ml | pH9.0~9.5 | 7~11% | チオ システアミン |
| 酸性 ストレート | 0ml | pH4.5~6.5 | 10~20% | GMT スピエラ |
| VERY VERY ぷるぷる | ≒0ml | pH6.0~8.0 | 4~7% | チオ アセチルシステイン |
還元剤とは?
毛髪内部には、システイン同士が結合したSS結合があります。
還元剤は、このSS結合に作用します。
一般的には「SS結合を切る」と説明されますが、もう少し正確には、還元剤のSH基がSS結合に反応するSH/SS交換反応が起こっています。
非常に簡略化すると、次のように考えることができます。
KSSK+RSH
↓
KSH+ KSSR
さらに反応が進むことで、
KSSR+RSH
↓
KSH+RSSR
というように、毛髪ケラチンのSS結合が還元されていきます。
しかし、SS結合をたくさん切れば切るほど、癖毛がきれいに伸びるわけではありません。
必要以上にSS結合を切るほど、引張強度の低下や弾力低下、絡まりなどにつながります。
縮毛矯正に使用される還元剤の種類
縮毛矯正には、さまざまな還元剤が使用されています。
| 還元剤の種類 | 分子量 | 至適pH |
| チオグリコール酸アンモニウム | 109 | pH9~9.5 |
| システアミンHCl | 113 | pH6~9 |
| スピエラ | 118 | pH5~6 |
| GMT | 166 | pH6~7.5 |
| チオグリコール酸システアミン | 169 | pH6~8 |
チオグリコール酸アンモニウム
縮毛矯正で古くから使用されている代表的な還元剤です。
強い癖毛にも対応しやすいため、現在でも多くの縮毛矯正剤に使用されています。
「チオは傷む」と言われることがありますが、チオグリコール酸そのものだけでダメージが決まるわけではありません。
高いpH、高いアルカリ度、高濃度の還元剤を組み合わせれば作用は強くなり、逆に低いアルカリ度などで設計すれば作用は変わります。
システアミン
比較的幅広いpH領域で使用されている還元剤です。
チオグリコール酸とは反応特性が異なり、柔らかい質感を作りやすい一方、独特の残臭が出やすいという特徴があります。
「化粧品だから優しい」という意味ではなく、濃度やpH、使用方法によって毛髪への負担は変わります。
GMT
GMT(グリセリルモノチオグリコレート)は、酸性~中性域で使用されることの多い還元剤です。
酸性ストレートなどにも使用されています。
アルカリ作用を抑えることはできますが、その分、還元剤濃度や熱を利用する設計になる場合があります。
スピエラ
スピエラ(ブチロラクトンチオール)も、酸性域で使用できる還元剤です。
ダメージ毛などに使用されることがありますが、独特の反応特性があるため、使用量や施術条件のコントロールが重要になります。
チオグリコール酸システアミン
チオグリコール酸システアミン(システアミンチオグリコレート)は、チオグリコール酸とシステアミンがイオン結合してできた、比較的新しい還元剤です。
酸性のチオグリコール酸と、塩基性のシステアミンが反応することで「塩」を形成しています。
構造としては、チオグリコール酸側とシステアミン側の両方にSH基を持つのが特徴で、一般的なチオグリコール酸塩やシステアミンとは異なる還元剤として使用されています。
また、弱酸性領域でも使用できるため、酸性のパーマ剤や縮毛矯正剤などに配合されることがあります。
ただし、還元剤は種類によって分子構造、反応速度、反応する部位などが異なるため、同じ濃度だから同じ還元作用になるわけではありません。
つまり、還元剤の名前だけを見ても、その縮毛矯正剤が強いのか弱いのかは判断できません。
pHとは?
pHは、その薬剤が酸性なのか、中性なのか、アルカリ性なのかを表す数値です。
縮毛矯正では、pHによって還元剤の反応性や毛髪の膨潤状態などが変化します。
一般的に還元剤は、pHが高くなるほど反応性の高い状態の割合が増えるため、還元作用も進みやすくなります。
ただし、還元剤によって性質が違うため、「pH8なら弱い」「pH9なら強い」とpHだけで判断することもできません。
アルカリ度とは?
pHと混同されやすいのが「アルカリ度」です。
アルカリ度は、簡単に言えば薬剤が持っているアルカリの量や持続力の目安です。
縮毛矯正においては、アルカリ度が高いほど、アルカリの作用量も強くなります。
例えば、同じpH9の縮毛矯正剤であっても、アルカリ度が1mLの薬剤と7mLの薬剤では、毛髪に与えるアルカリ作用は同じではありません。
アルカリは毛髪を軟化・膨潤させ、還元剤が毛髪内部で作用しやすい状態を作ります。
その一方で、過剰なアルカリ作用は毛髪の構造を大きく変化させるため、大きなダメージに繋がります。
そのため、縮毛矯正剤を見る場合、pHだけでなくアルカリ度も重要です。
還元剤濃度とは?
還元剤濃度とは、その名の通り、縮毛矯正剤にどのくらい還元剤が配合されているかという数値です。
基本的には濃度が高くなれば、SS結合を切る量も増えます。
しかし、還元剤濃度が2倍になればSS結合を2倍切る、といった単純な関係ではありません。
実際の作用量は還元剤濃度だけではなく、
- pH
- アルカリ度
- 温度
- 放置時間
- 毛髪のダメージレベル
などによって大きく変わります。
癖毛が伸びにくいからといって、単純に還元剤濃度を高くすればよいわけではありません。
アルカリ度・pH・還元剤濃度は別々に考える
縮毛矯正剤を見るうえで、最も重要なのがこの考え方です。
| 項目 | 主に表しているもの |
|---|---|
| pH | 酸性・アルカリ性の程度、還元剤の反応しやすさ |
| アルカリ度 | 薬剤が持つアルカリの量・作用の持続性の目安 |
| 還元剤濃度 | 還元剤の配合量 |
| 還元剤の種類 | 作用する部位・再結合の割合 |
この4つは、それぞれ別の意味を持っています。
だからこそ、
「低アルカリだから優しい」
「酸性だから傷まない」
「チオだから強い」
「化粧品だから穏やか」
といった説明だけでは、実際の縮毛矯正剤の性質は全く分かりません。
名前やイメージではなく、薬剤全体の設計を見る必要があります。
1剤を流す「水洗」が重要な理由
1剤放置後、十分に水洗します。
この工程は、単に薬剤を洗い流しているだけではありません。
毛髪表面や内部に残っている還元剤、アルカリ成分などをできるだけ除去して、その後のアイロン処理へ持ち込まないための重要な工程です。
1剤が大量に残った状態でドライヤーやアイロンの熱を加えれば、薬剤反応と熱反応が同時に進み、必要以上の負担になります。
そのためVERY VERYでは、1剤後の水洗を非常に重要な工程だと考えています。
アイロンは何をしているのか?
1剤を流しただけでは、癖毛はまだストレートにはなっていません。
そこで、毛髪を乾燥させ、アイロンによって癖毛をストレートな状態へ整える必用があります。
毛髪は乾燥することで再び硬くなりますが、1剤によって変形しやすくなった状態で、熱を利用し真っ直ぐ方向へ整えるのがアイロンです。
ここで重要なのは、温度が高ければ高いほど、時間をかければかけるほど癖毛が伸びるわけではないということです。
過剰な熱は、そにまま毛髪へのダメージとなり、いつまでも残ります。
薬剤で十分に髪が動きやすい状態を作ることができれば、それだけ過度なアイロン処理に頼る必要がなくなります。
2剤の役割
アイロンで毛髪をストレートな状態へ整えた後、2剤を使用します。
2剤には主に過酸化水素や臭素酸塩などの酸化剤が使用されます。
1剤によって還元されたSH基などを酸化し、毛髪内部のSS結合を再形成させながら、状態を安定させます。
ただし、ここにも大きな誤解があります。
1剤で切断されたSS結合が、2剤によって100%再結合されるわけではありません。
還元・変形・酸化という一連の処理の中で、毛髪内部の構造が変化しています。
そのため、必要以上に還元させても、2剤で元通りになる、という考え方はできません。
縮毛矯正の負担(ダメージ)は3つに分けて考える
縮毛矯正による負担を考えるとき、大きく3つに分けて考えると分かりやすいです。
- アルカリ負担
- 還元負担
- 熱負担
アルカリ性縮毛矯正でアルカリ負担を大きくすれば、その分だけ還元剤が作用しやすくなります。
酸性ストレートでアルカリ負担をなくしても、高濃度の還元剤や強い熱処理を必要とすれば、還元負担や熱負担は大きくなります。
つまり、ひとつの負担を減らしても、別の負担を増やしていれば、必ずしも髪に優しい縮毛矯正になるわけではないのです。
大切なのは、アルカリ・還元・熱の合計負担を、必要な範囲まで小さくすることです。
従来の縮毛矯正では、癖毛が強ければ、より強いアルカリ、より高い還元作用を使うという考え方が一般的でした。
確かに、毛髪内部の構造を大きく壊せば、髪はより変形しやすくなります。
しかし、それと「自然で綺麗なストレートになること」は別の問題です。
必要以上にSS結合を切断したり、毛髪を過剰に軟化・膨潤させたり、高温のアイロン熱に頼るほど、それだけ毛髪への負担も増えます。
縮毛矯正で本当に重要なのは、どれだけ強い薬剤を使うのかではなく、どれだけ少ない負担で毛髪を動かし、真っ直ぐ方向に整えることができるかです。。
縮毛矯正は、名前だけで良いか悪いか判断できません
現在は、髪質改善ストレート、酸性ストレート、低アルカリ縮毛矯正、オーガニック縮毛矯正など、さまざまな名前の縮毛矯正があります。
しかし、その名前だけでは、実際にどの程度のアルカリ負担・還元負担・熱負担があるのかは分かりません。
縮毛矯正を見るときは、少なくとも、
- 何の還元剤を使用しているのか
- どのくらいの還元剤濃度なのか
- pHはいくつなのか
- アルカリ度はいくつなのか
- どの程度の熱を使用するのか
を総合して考える必要があります。
縮毛矯正の種類については、縮毛矯正の種類で、アルカリ性縮毛矯正、酸性ストレート、ぷるぷるストレートの違いについて詳しく説明しています。
このページでは、そのすべてに共通する「縮毛矯正が癖毛をストレートにする基本的なしくみ」を理解していただければと思います。
